博多ラーメンの一風堂が都内5店舗で限定リリースした「茸香るベジ麺 from Paris」は、出汁も具も麺も100%植物性なビーガンラーメンです。
名前からも分かるようにフランスはパリの「IPPUDO」で人気のメニューを日本に逆輸入したこのラーメン、ベジタリアンが多い欧米ならいざ知らず、肉食天国な日本で販売するって、本当にすっごいコトなんです!
なぜなら一風堂でラーメンを食べるお客さんの100人中ほぼ100人が「一風堂=とんこつ」という認識だからです。それなのに、とんこつはおろか魚も使っていない植物だけのラーメンを誰が食べるの?
と、ふつうの感覚を持っている人なら思いますのよね。
こんな無謀ともいえるチャレンジをしているのが・・
一風堂の創業者である(株)力の源カンパニー 代表取締役の河原成美さんその人なんです。
とんこつラーメンのグローバルブランド「一風堂」が国内で植物性100%のビーガンラーメンをリリースした衝撃。
日本のラーメン文化、ひいては世界のラーメン文化に多大な影響を与えている一風堂。
この秋、リリースした期間限定ラーメン「茸香るベジ麺 from Paris」をさっそく食べてきました。結果・・あまりにも美味しかったので2日後にもう一回食べてきた僕(@ka__zz)です。
そのビーガンラーメンがこれです。
細長いチャーシューかと思ったらローストされたエリンギ、色彩豊かな野菜のトッピング、ポルチーニ茸で出汁をとった澄んだスープ、パプリカが練りこんである麺・・見事なまでに野菜尽くしで、スープからただよう茸の香りはうっとりするほど絶品でした。
そしてこのラーメン、おそらくは世界初だと思うのですけど、付け合せのリュスティック(パン)と一緒に食べるという革新的な食べ方なんです。
スタッフさんに言われた通り、パンをちぎってスープにひたして食べてみると・・
これが実に美味しいのです。醤油ダレのスープですがオリーブオイルが効いているせいか、ラーメンのスープなのにまるでフレンチレストランの野菜スープのような味わいなのです。ともかく、ラーメン屋で「パン」を出すという試みからも、このラーメンが野心に溢れていることがわかります。
▼茸香るベジ麺の食レポ
ラーメン業界のニューウェーブであるビーガンラーメン。
日本と世界のラーメン文化を拡大させた一風堂。
世界各国で展開している一風堂は、お客さんのニーズを敏感にキャッチしてメニューを構成しておりアメリカ、アジア、ヨーロッパのお店ではベジタリアンでも食べることができる植物系のベジラーメンを各店舗で展開しています。
海外では一風堂以外のラーメン店でもベジタリアン向けのメニューを置くお店が多くあります。中には、ベジタリアン専門のラーメン店まであるくらい日本式ラーメンは海外で人気と市民権を得ています。
2020年に東京オリンピックを控えた日本でも、ベジタリアン向けのレストランやカフェが急増。また麺屋武蔵や九州じゃんがらなどの有名店もこぞってベジタリアンラーメンをテスト的にリリースをして様子をうかがっています。
すでに、この流れをだいぶ以前から読んで先行しているソラノイロは、ミシュランのビブグルマンを2年連続で獲得したり、東京駅の人気スポット「東京ラーメンストリート」に出店したり、今度は京橋にできる話題の複合商業施設「エドグランド」にも新店がOPENするという驚くほど早い流れでベジラーメンを拡大させています。
そんな、ソラノイロの店主宮崎さんは、一風堂の河原社長と共に拡大期を支えてていた幹部スタッフだったことも興味深いところです。
パリはサンジェルマンにある一風堂。
世界中で評価を得ている一風堂
1985年に博多で創業した一風堂は、1994年に新横浜にOPENしたフードテーマパーク「ラーメン博物館」に出店して関東に進出を果たすと、翌年の1995年には広尾に東京に初出店。
そこからは、飛ぶ鳥を落とす勢いで、全国各地へ進出。現在は国内に120店舗、海外に60店舗あまりを展開するまでに急成長しました。
1日で7万食、年間でおよそ2500万食を販売する規模もさることながら、2010年には食べログ的な口コミサイト「Yelp!」においてアメリカ全土のすべての飲食店でナンバーワンを獲得しています。
▼一風堂創業者 河原成美氏の最新著書
とんこつラーメン店であえてビーガンラーメンを出す意味。
予想をはるかに超えた美味しさの茸香るベジ麺でしたが、とんこつラーメンの一風堂に来るお客さんが果たしてそれを求めているか? といえば、100人中99人のお客さんは「別に必要無い」と回答するのが、現時点でのマーケットです。
これが、ベジソバで成功をおさめている人気ラーメン店「ソラノイロ」であれば数字はかわってきます。その理由は単純で、お客さんはソラノイロの代名詞であるベジソバを目的に来店するからです。
とんこつラーメン店でベジラーメンを食べるのは、僕のように肉は食べないけどラーメン好きな変わり者くらいしかニーズがない・・と考えるのが普通ですよね(笑) はっきり言えばとんこつラーメン店でビーガンラーメンのニーズはほとんどないでしょう。たしかに日本でもベジタリアンは増えているし、海外からの旅行者は15〜20%がベジタリアンであるという統計はありますが・・
とんこつラーメン店であえてビーガンラーメンを食べるシチュエーションを想定すると、商売としては成立しないほど低いはずです。例えば、カップルでとんこつラーメンを食べに来たけど彼氏がベジタリアンだった場合とか、ベジタリアンが会社の飲み会の〆でラーメンをするために一風堂へ行った時とか・・かなりレアなケースしか想定することはできません。
一風堂の創業者が自ら開発したビーガンラーメン
メニューとして登場させるには、ある程度「売れる」という見込みがないとGoサインを出さないのが一般的な鉄則ですが、そんなセオリーを無視するところが、さすが一風堂であり相当大きな価値があります。
スマホによって世界を変えたiPhoneは、スティーブ・ジョブズによってマーケティングをいっさい無視して商品開発され現在に至っています。つまり、イノベーションはマーケティングから生まれることはありません。
常識にしばられず、周囲に流されることなく、インスピレーションと信念にしたがった者だけが新たな時代を切り開くのでしょう。
それと同じように非常識なチャレンジをしている一風堂ですが、実はこのビーガンラーメン・・創業者である河原さんが自ら開発したというのですから驚きです。しかも8ヶ月もの時間と手間をかけて。
とんこつラーメンで成功を手にした人が、とんこつを捨てて植物だけでラーメンを作る。
この潔さとチャレンジ精神は、人としてリスペクトせずにはいられません。そして「美味しいラーメンを作って食べた人を喜ばせる」という河原さんの信念こそが、職人として本物のプライドなんだと思います。
一風堂2017年3月に東証マザーズへ上場。
これはとても素晴らしいニュースです!
一風堂を運営する博多ラーメン店「一風堂」を運営する《力の源ホールディングス》が、東京証券取引所へ上場することが決まりました。時価総額の予想は300億円の予想で、海外などへ展開するための資金調達などに有利になるとの話です。
出典:日経オンライン「博多ラーメン「一風堂」マザーズ上場へ 3月にも、国内外で出店加速」
追記・・2017年1月7日
【関連記事】
「現代人が抱えるヤバすぎる味覚の問題」ソラノイロのベジソバを食べて想ったこと。
「ベジタリアンって何を食べて生きているのよ?」そんな疑問がある人に僕の食生活を大公開。
それでは皆さん、よい一日を!
Have a good day!